ヨコハマアパートメント訪問

住宅や集合住宅などの空間が、個人や家族の完結した領域をつくるだけの存在ではなくて、もう少し地域や社会に開かれたものとしてつくられていくと、街の風景も随分違ったものになるだろうなと考えることがある。そんなことを考えながら新建築の2月号を眺めていたら、ヨコハマアパートメントの広場と呼ばれるスペースがどうにも気になった。このスペースが、どんな風に街に現れ、どんな風に使われているのか是非体験してみないといけないと思った。


現地を訪れるまで、広場と呼ばれるスペースは、地域に積極的に開放された場所だと勝手に思っていた。でも、西田さんの説明を聞くとそうでもないようで、むしろ居住者たちが思い思いに過ごせる庭のような大きな部屋のようなスペースのようだ。その話を聞いていて、僕が伊東事務所に勤めていた頃、ランチに行くルートの途中にあったRC造の住宅のことを思い出した。その住宅は、1階が大きなガレージになっていて、そこに高価そうなオーディオが無造作に置かれ、住人は平日の昼間からソファに横になって結構な音量で音楽を聴いていた。家の前を歩いている僕たちのほうが鑑賞されているようで、とても不思議な感じだったが、そのあけっぴろげな様子がとても開放的で、住み手の生活が街にはみ出してしまっている魅力的な風景だった。


僕たちは、どのくらい個人的な領域を守らなくてはいけないのだろう。どんどんさらけ出していったほうがいいのではないか?ヨコハマアパートメントの広場にいると、住まい手同士や町との適度な距離、それから街にちょっと露出?してしまっていることによる開放感を感じる。ガレージで音楽を聴いていた人の楽しさが分かったような気がした。

竹内申一/竹内申一建築設計事務所