アパ訪問記

こんにちは.
西田さん、先日はお忙しいところご案内いただきどうもありがとうございました.
遅ればせながら感想をアップします.


アパの広場を体験して、「アゴラ」という語を思い浮かべた.

そういえば見慣れないプロポーションファサードは、1階の広場と2階の居住空間の対比がまるでギリシャオーダーと破風のようなバランスではないか.おまけに基壇まである.柱は縦縞ではなく横縞なことはさておくとしても、いよいよこれはアゴラなのだという感を強くする.そして演劇的な階段を下りてくる西田さんはギリシャのコスチュームがとても似合いそうだ.

アパはその建築的構成から、個のあり方や運営のソフト面まで、民主的なニュートラルさを体現している.接道側が正面ですといえばそうだけれど、立面構成は四面一緒.くさび形にヒエラルキーはなく、2階平面もクールに田の字に分割.この形式が素晴らしい.よくあるアパートの、片廊下で南面した住戸群はセルの一つ一つに多様な生活が営まれていたとしても、監視者がいなければ住人は独房に閉じこもってしまう.対してアパの広場は、不在の監視所たる広場を充足し、自ら監視する目となるために進んで独房から降りてくるような、そんな仕掛け.なんとなく、人は広場が空っぽだと不安になるのである.そしてそこで何をするかは自由なんだけど、なにかをしなくてはならないし、なにをするかは等価な主体の4人によって牽制しあい、話し合う.形式の民主化・政治化によって巧妙に権力を排除し、自由意思によって善きアゴラがもたらされる、その可能性を見た.


小林泉/パワーアーキテクツ
http://www.powarch.com/